 ☆しゅん吉☆ |
優しい音 2010/8/17 23:46
酔っぱらうと電話をしてくる友達がいる。
決まってギターを弾いてくれと頼まれる。 最初は仕方なしに弾くのだが、弾いているうちにだんだん楽しくなっていく。 なぜなら、友達が凄く喜んでくれるからだ。 正しく言うと、凄く喜んでると勘違いしそうになる位の良い反応が返ってくる。
「優しい音だね、癒される」 いつもそう言ってくれる。
その言葉のお陰でより一層優しい気持ちになれて、透き通った優しい音が奏でられる。 最初は雑な弾き方も、少しずつ愛しいモノを触れるようになっていき、いつの間にか気分が高揚していく。 時間の流れが遅く感じるようになり、このまま止まってしまうのではないかと錯覚しそうになる。
自分でも、表情が柔らかくなっている事に気付き始めた頃友達は、 「あれ弾いてよ」 と言って、いつもの曲をリクエストする。
それは3年前の夏に作った。 歌詞、曲共に何度も手直しした子供のような存在。 だから、聞きたいと言ってくれる度にとても嬉しい。
右手の親指で6弦、同じく中指で3弦を同時にはじく。 イントロのGmajor7。 この瞬間、「早く弾いてよ」という声、手遊びの音、テレビの音、向こうから聞こえていたあらゆる雑音が消える。
囁くように歌い始める。 優しい音は静寂の中鳴り響いて、電波に乗ってお互いの距離を縮め、二人を同じ空間の住人にしてくれる。
最後の音が消える。
「他の曲も良いけどやっぱりこれが一番だね。元気出た!」 そう納得するように言うと早々と電話を切る。
呆れた奴だ。 いつもそう思う。
でも何故か憎めない。 きっと「曲」を「音」を求めてくれるからだ。 そして、少々大袈裟に感じる位喜んでくれるからだ。 酔っていても面倒臭くても許してしまう。
優しい音は二人を優しい気持ちにして、明日への活力を生んでくれる。
一人では出来ない。 求める人と与える人 二人いないと優しい音は奏でられない。
今日も実は友達からの電話を待っている。 明日も頑張りたいから。
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